2011年10月18日火曜日

福島県南相馬市で行っている除染活動について


福島県南相馬市立総合病院の非常勤医で、東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門研究員の坪倉正治氏が、秋葉原に放射線測定機器のトレーニングセンターが開設された記念講演会で、福島県南相馬市で行っている除染活動について、現場の苦労や実情を語った.
坪倉医師:南相馬市は現在0.3から0.4マイクロシーベルト/時。人口は元々7万人だったが、4月あたまに1万人まで減って、現在は4万人程度まで回復しました。南相馬は元々合併市、小高区、原町区、鹿島区が合併されて出来た市。それが同心円で3つに区切られ、海側は津波の被害が大きく、船がまだ陸に置いてある。山に向かって行くとどんどん放射線量は上がっていきます。山の上になると飯館村になって、村の中で3~4マイクロシーベルト/時。飯館村の南側になると、10~12、3マイクロシーベルト/時。東京の120倍くらいの線量です。

■除染は手作業


除染の基本動作は
・土をはぐ
・水で洗う
・草を抜く
基本的にはこの3つしかありません。薬剤や、何らかの方法はあるのでしょうが、実際に南相馬市でやれているのはこの3つのみです。鋤と鍬と水があれば出来るので、近代兵器は必要ありません。この3つをどう組み合わせるかという話になります。

実際に、除染のポイントというのは、とにかくありとあらゆる所を計測すること。この1点に尽きると思います。どういう風に除染すればいいのか、どう内部被曝を減らせばいいのか、いろいろな問題がありますが、計測ポイントを増やし、計測回数を増やさなければ、何も解決策は生まれない。この点に尽きると思います。今我々は、5cm、1m、2m、それぞれの場所で計測をしています。

例えば、雨どいの数値が高い、水のたまる側溝が高いと言われています。それを取り除くとどうなるか。周り5mの数値に影響するんです。ガンマ線は100m飛びます、200m飛びますと言いますが、数値が高いということは、5m以内に原因がある。そこを徹底的に探すんです。その繰り返しで0.1マイクロシーベルト/時、下げれば1年で1ミリシーベルト下がる。これを繰り返すしかない。大切なのは線量計を一般市民も含め、使いこなすこと。これが現場で求められている状況です。

土を剥ぐ深さについて、5cm剥げばいいか、10cm剥げばいいかという議論がありますが、これはあまり意味のない議論で、土は、掘れば掘るほど下がるんです。「何cm掘りたいんですか」ではなく、「何シーベルト下げたいんですか」なんです。粘土質の土は浅く掘っても効果がありますが、砂地は深くまで浸透しているのでかなり掘らなくてはいけない。場所によってぜんぜん違うんです。ただ、難しいのが、掘った跡がでこぼこになってしまう。台風なんかが来ると、そのでこぼこに放射線物質が再びたまってしまう。屋根とか壁も種類によって違う。

除染について、今我々が考えているのは、南相馬市全体でガサっとやれれば、それはいいかも知れませんが、現実的にはとても簡単に出来る話ではないと思います。少なくとも自分の周り半径何mという範囲をいかに綺麗にするかというのが今の段階です。

幼稚園、小学校、中学校の校庭は、機械が入って除染することができますが、建物の中、家屋などについては、事細かに測定、除染をしなくてはならない。家の中の線量をいかに下げるか。そのために庭を除染する。庭の線量を下げるためではなく、庭に近い部屋の中をきれいにするために除染する。そういう考えで除染をしています。家の中1階だけでも15箇所~20箇所計る。そうしないと、安心してもらえない。家の周りを除染すると、窓側の部屋の数値は下がるが、家の中央の部屋の線量は下がらない。原因を5m以内で探さなければいけない。
保育園の除染もしました。20m×15mくらいの敷地で、800箇所ぐらい計りました。それくらいやらないと、除染の効果はわからない。そして場所によって除染の方法を決めていきます。

保育園の隣には家もあります。そばには川もあって、川は県の管轄で、県に話をしようとすると、「1ヶ月待ってください」と言われて、1ヵ月経ってもぜんぜん返事がない。

隣の家と庭の草木を刈りました、しかし線量は上がりました。そこで下の土を剥ぎましょうとなった。土を剥いだら建物が傾いてしまう場所もある。じゃあどうする、立ち入り禁止にするかと、保護者と相談する。

この前、福島のある地区で、通学路の線量を下げるために放射線の高い雨どいの土を掃除して、その土を雨どいの横に並べておいたら、通学路の線量は上がったというのがありました。当たり前です。その土をどこに持っていくのか、考えておかなければいけない。

土を捨てる場所を探すのが大変です。保育園では、駐車場を借りて埋めました。その駐車場のとなりのアパートに、一軒一軒園長が頭を下げて説明に回ったんです。「処理はしっかりしますので、子供を守るために埋めさせてください。線量も測って、ちゃんとやりますのでよろしくお願いします」と。

それと同時に、当院(南相馬市立総合病院:原発に最も近い総合病院)にはホールボディカウンターが2台あります。鳥取から1台借りています。現在4000人の検査が終わりました。日本の半分をやっています。ただ、小さい子どもは(計測の)2分間じっとしてはいられません。いろんな検査をするのも、限界があります。人体のチェックも大切ですが、今は、口から入る食べ物をしっかり検査して、これ以上体に放射性物質を入れないのが効果的です。

今後の体への影響も、除染も、食べ物に関しても、できるだけ細かく測ること、その精度を上げていくことが、今後のキーになってくると思います。





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